著作物として認められるデータベースの作り方について考える

 投稿日時
2016/10/21 18:34:31
 最終更新日時
2016/10/26 10:19:44

前回の記事「著作物ではない有償の情報を無断でデータベースに組み込んだ行為が不法行為でないとされた事例ー東京地裁平27.2.13(平24ワ24738)」では、東京地裁平27年2月13日判決(平24ワ24738)を見て、データベースの複製について検討を行いました。
今回はその派生として、データベースが著作物として認められるための要件について、そして著作性が認められるデータベースとはどのようなものなのか考えたいと思います。

データベースが著作物として認められるための要件

著作権法

まず、著作権法でどのようにデータベースが定義されているか確認してみます。関連しそうな部分は以下になります。

著作権法

(目的)
第一条  この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一  著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
(略)
十の三  データベース 論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。
(略)
(データベースの著作物)
第十二条の二  データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。
2  前項の規定は、同項のデータベースの部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。
(略)

(注:強調は引用者による。)

つまり、下記の二点の要件を満たすものが、データベースが著作物として認められるための要件と考えてよさそうです。

  • 論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの
  • その情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するもの

「体系的な構成」については、データベースでいうと行と列で二次元的で表現し、検索可能な状態に置いてある状態を指していると考えられます。近年、個人情報保護法の改正でも言われていることですが、「散在情報」(文章など)ではなく「処理情報」(リスト化されたデータ)を指しているということでしょう。
そして、第二条一項で著作物を「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義していますが、データベースに関してはその集めたデータ自体に「思想又は感情」が求められるわけではありません。二つ目の要件にあるとおり、「その情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するもの」が「思想又は感情を創作的に表現したもの」と判断されるという考えられます。

書籍『著作権法コンメンタール』による解説

定義は分かりましたが、二つ目の要件に定められている、「情報の選択」とはどれくらいの選択が求められるのか、「体系的な構成」とはどの程度のものなのかは、条文を読むだけでは分かりません。この辺の定義については『著作権法コンメンタール1 第1版』[AA](半田正夫・松田政行編/勁草書房、2009年)を見てみたいと思います。 この本は著作権法の本の中でも一番分厚い本なのではないでしょうか。私の手元にあるのは第1版ですが(2015年12月に第2版が出ています)、1条から22条の2まで解説した1巻だけで936ページのボリュームです。著作権法の条文それぞれについて、条文の解説はもちろん、関係する著作権に関する条約(ベルヌ条約、TRIPs協定など)、外国の立法例が書かれている本です。
(以下、書籍からの引用部分の強調は全て引用者によるものです。)

情報の選択

この本では「情報の選択」について「いかなる情報をデータベースの対象とするのかを決定し、情報を選別して選択すべき情報を決定することに創作的な精神活動が認められることをいう。」(P.620)、「…情報を選別して選択すべき情報を決定することに主体的な判断が要求される。」(P.621)とされています。データベースにデータを格納する通常の手順は「データの収集」→「データベースへの格納」という順番かと思いますが、その間に「(意思に基づく)データの選別」が入る必要があるということになります。
中には、収集したデータは全てデータベースに入れておきたいという考えもあると思いますが、それについては「例えば、日本の判例検索用データベースにおいて…すべての判例を収集した場合には情報の選択は行われていないことになるから、情報の選択という観点からは創作性はないことになる。」(P.624)と書かれており、そういったやり方では「情報の選択」という要件は満たさないという考えが示されています。

なお、「情報の選択」とは対象とする情報を選択すること(行の選択)と、情報の中の項目を選択すること(列の選択)のどちらかという疑問もあると思いますが、後述するオフィス・キャスター事件の判決にはどちらも対象となるかのような説示があるとされています(P.640)。

体系的な構成

「体系的な構成」については、「収集、選定した情報を整理統合するために、情報の項目、構造、形式等を決定してフォーマット(様式)を作成し、また、分類の体系を決定する」(P.625。文化庁が1985年9月に出した報告書より引用されている)ことが体系の設定であり、「体系化されたシソーラスによるキーワードを付与して情報の属性を示したり、情報のグルーピングのための印を付すことや、入力フォーマットにおける個々の情報のフィールドその指定など」(P.626。作花文雄『詳解著作権法[第3版]』ぎょうせい、2004年より引用されている)を意味すると書かれています。
「情報のグルーピングのための印」とは、集めた情報に独自の列としてフラグを立てたりすることが該当すると考えられます。

データベースの著作物性が争われた判例

次に、データベースの著作性が争われた判例を見ていきます。

東京地裁平成12年3月17日 タウンページデータベース事件

NTT東日本が作成したタウンページを基にして、別の業者が業種別データを作成し頒布した件が問題となった事例です。

「情報の選択」が認められたか

掲載者から情報を聴取していること、職業分類を大中小の三層構造としていること、随時見直しを行っていることから著作物であると主張したが、認められなかった。
まず、掲載者から情報を聴取していることは「個々の掲載者の事業の内容をいかに正確に把握するかという事実認定に関するものであると考えられることからすると、(略)情報の選択又は体系的な構成について創作性が存するとは認められない。」と判断された。
次に、利用者による検索の利便性の観点から、職業分類を大中小の三層構造としていることは、「電話番号情報に関する職業別のデータベースとして利用者に提供する以上、当然にすべき配慮であると考えられる」ために「特に創作的なものとは認められない」ため、「情報の選択又は体系的な構成について創作性が存するとは認められない。」とされた。
随時見直しを行っていることは、「具体的な内容にかかわらずそのことのみでタウンページデータベースが情報の選択又は体系的な構成により創作性を有するということができないことは明らか」とされた。

「体系的な構成」が認められたか

体系的な構成であると認められた。
判断のポイントは1800の職業分類を大中小の三層構造にしていること、日本標準産業分類の分類項目と分かれた独自の分類であることである。それらを基に、「タウンページデータベースの職業分類体系は、検索の利便性の観点から、個々の職業を分類し、これらを階層的に積み重ねることによって、全職業を網羅するように構成されたものであり、原告独自の工夫が施されたものであって、これに類するものが存するとは認められないから、そのような職業分類体系によって電話番号情報を職業別に分類したタウンページデータベースは、全体として、体系的な構成によって創作性を有するデータベースの著作物であるということができる。」と判断された。

東京地裁平成13年5月25日中間判決 自動車整備業務用データベース事件(翼システム事件)

この事件では、著作権法で保護されるべきデータベースとは判断されませんでしたが、民法上の不正行為の成立が認められています。

「情報の選択」が認められたか

自動車メーカーが類別区別番号を付与したもののうち、実在の自動車のみを対象としたことで情報の選択が行われていると主張したが、それは「情報の収集過程において一定の知的作業を要するというにとどま」るものであり、「国内の自動車整備業者向けに製造販売される自動車のデータベースにおいて,通常されるべき選択であって,本件データベースに特有のものとは認められない」ために認められなかった。
またダミーデータ及び代表データの収録についても、情報の選択は認められないとした。

「体系的な構成」が認められたか

データベースの項目、用いている名称が一般と異なる点などから主張したが、認められなかった。
まずデータベースの項目については、車種以外の項目が自動車検査証に記載すべき項目であることや、他業者のデータベースにおいても使われている項目であることから、創作性を有しないと判断された。
次にメーカーや車種の名称が一般と異なる点(「ダットサン」を「日産」と標記するなど)についても、「車名や車種の名称として独自の名称を用いているというにすぎないから」創作性を有しないと判断された。
またこれ以外にも原告がコード番号を付与している点や、数値データの検証を行っている点を主張したが、いずれも創作性を有する理由とは認められなかった。

東京地裁平成14年2月21日中間判決 オフィス・キャスター事件

本事件は、MS Accessで作られた不動産情報データベースの譲渡を巡って起こった事件です。上の二つと異なり、複数の表にまたがって著作性の判断がされた点が特徴といえるでしょう。そのため、判決でも具体的なテーブル名や結合について検討がされています。
この判決でははっきりと「情報の選択又は体系的な構成によってデータベースの著作物と評価することができるための重要な要素は,情報が格納される表であるテーブルの内容(種類及び数),各テーブルに存在するフィールド項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方の点にあるものと解される。」と述べられています。

「情報の選択」が認められたか

「…7個のエントリーテーブル内には合計311のフィールド項目を,12個のマスターテーブル内には78のフィールド項目を配し,各フィールド項目は,新築分譲マンションに関して業者が必要とすると思われる情報を多項目にわたって詳細に採り上げたものと認められるのであって,これをセットとしてみたとき,創作性がないとはいえない。」として、情報の選択による創作性を認めた。
被告は他社のデータベースとの類似を指摘しましたが、比較してみると他社の方が単純なものであるため、「個々のテーブル,フィールド項目や関連付けに着目するのではなく,テーブル間の多種多様な関連付けなどの全体を総体としてみれば,そこに創作性を認めることが可能である。」とした。

「体系的な構成」が認められたか

認められた。長くなりますが、その理由を以下に引用します。

各テーブル間の関連付けのあり方について敷衍して述べると,PROJECTテーブル,詳細テーブル等の7個のエントリーテーブルと法規制コードテーブル等の12個のマスターテーブルを有し,エントリーテーブル内には合計311のフィールド項目を,マスターテーブル内には78のフィールド項目を配し,各フィールド項目は,新築分譲マンションに関して業者が必要とすると思われる情報を多項目にわたって詳細に採り上げ,期分けID等によって各テーブルを有機的に関連付けて,効率的に必要とする情報を検索することができるようにしているものということができる。すなわち,客観的にみて,原告データベースは,新築分譲マンション開発業者等が必要とする情報をコンピュータによって効率的に検索できるようにするために作成された,上記認定のとおりの膨大な規模の情報分類体系というべきであって,このような規模の情報分類体系を,情報の選択及び体系的構成としてありふれているということは到底できない。

まとめ

事件名 情報の選択が認められた 体系的な構成が認められた
タウンページデータベース事件 ×
翼システム事件 × ×
オフィス・キャスター事件

「額に汗」理論(the sweat of the brow doctrine)(額の汗の法理)

ここまで読んできた方ならば、「データベースのデータ収集に手間や費用がかかったとしても、そのことは著作権として判断されるポイントにはならない」ということにお気づきだと思います。昔のアメリカでは、この点を満たしていれば著作物であると認める判断のポイントとなっていましたが、1991年のファイスト(Feist)裁判で否定され、収集の手間ではなく、情報の選択などの点で創造性を示すべきであると変更されました。
この考え方は「額に汗」理論や「額の汗の法理」と呼ばれており、日本の著作権法でも、著作物として判断するかどうかというポイントとは関係ありません。ただ、これはあくまで著作物として判断されるかどうかであり、翼システム事件の説明で書いたとおり、民法上の不法行為となる可能性は残されています。

著作物として認められるデータベースの作り方に関する私案

長くなりましたが、データベースが著作物として認められるためには何が必要か、そしてどういった時に認められて、どういった時に認められないと判断されてきたかがお分かりいただけたでしょうか。
最後に、蛇足になってしまうかも知れませんが、著作物として認められるデータベースの作り方について、私の考察を書いていきたいと思います。

求められる解決策

上で書いてきた内容と重複しますが、著作物として認められるためには、以下の事柄が必要になります。

  • 情報の選択or体系的な構成として認められる
  • 上の構造を満たしていることが見た人にも分かる

例えば、全国の弁護士を検索するデータベースを作ろうとしたとしましょう。この場合、ただがむしゃらに弁護士の情報を集め、ありふれた条件(氏名、事務所名、都道府県等)で検索できるようにしただけでは、情報の選択と体系的な構成のどちらも満たすとは考えられず、著作物として認められる可能性は低いと思われます。この点は前に書いた判例からも明らかです。
ではどうすれば良いのかというと、以下のような考え方で考えるべきではないでしょうか。

まず、弁護士の情報を集める際に、可能な限り詳細な項目まで取得するようにします。これは私の考えですが、期、出身大学、出身ロースクール、出身ゼミ、所属事務所(過去の履歴も含む)、所属弁護士会、著作/論文、関係する有名な判例、活躍分野、前職などです。弁護士の検索として有名なものは、日弁連が提供する弁護士検索サービスや、弁護士ドットコムの検索サービスがありますが、これらに数で劣っても、詳細度では勝る必要があるでしょう。

次に、取得した項目を基にして、どういった条件で検索することができれば利用者の利便性が高いか、またこれから作ろうとしているデータベースの独自性を出せるかを考えます。例えば、こんなものはどうでしょうか。

  • 過去に大手事務所に所属していて、現在では独立している
  • 過去にある分野で出た著名な判例に関わっている
  • ある分野に関する論文、著作がある
  • 前歴で、ある分野と関わりがある(弁護士になる前は○○だった、等)

実際にこれらに基づくデータを集めたとして、次にテーブル構成を考えていきます。

解決策(1):データを分類し、入れるテーブルを変える

「情報の選択」を満たすことを考えたパターンです。上で、独自性を出すための検索方法として4つ挙げましたが、対応するテーブルを1つずつ作成します。そして、集めたデータを該当するテーブルに入れていき、どれにも該当しないデータは破棄します。 この方法だと、情報の選択という条件は満たすと思われますが、「大手事務所から独立した弁護士の中で名字が○○さん」を検索することは可能ですが、使い道に困るテーブルになりそうです。

解決策(2):一つのテーブルに入れて、フラグを持たせる

「体系的な構成」を満たすことを考えたパターンです。まず、集めたデータを全て一つのテーブルに格納します。そして、データが上の独自性条件のいずれかに該当する場合、何らかの方法でフラグを持たせるようにします。良くない方法ですが、SQLアンチパターンのジェイウォークパターンのように、同じテーブル内にフラグ列を持たせてもいいでしょうし、フラグ情報を管理するテーブルを作った上で、多対多を表す交差テーブルを持たせてもいいでしょう。これならば、通常検索にも使用できますし、独自の検索項目でも検索が可能になります。

お気づきの方もいらっしゃるかも知れませんが、この方法については、フラグを持たせなくてもSQL側でWHERE句を工夫すれば動的に抽出することが条件によっては可能となる場合があります。この場合、「データベースだけでは体系的な構成を満たさないが、それに関連するプログラムも含めれば体系的な構成を満たす」ということがありうると考えられます。著作性を判断する際にデータベースだけしか見てくれないのか、それに関連するプログラムも見てくれるのか、判例でははっきりした回答を見つけることはできませんでした。(強いて言うなら、「オフィス・キャスター事件」はAccessで作られたデータベースが争点となっているのですが、これは複数テーブルを連携させたものであり、使用するにはAccess上で作られた連携が必須となっています。)
ただ、『著作権法コンメンタール』にはこの点について、以下のように書かれています。

…データベースプログラムがデータベース制作者の体系的構成についての意図を反映させて作成されているような場合には、プログラムはデータベース構築の手段にすぎないのであるから、データベースの体系的構成の創作性は当該プログラムによって実現される体系的構成について吟味されればよいものの考えられる。(P.626-627)

つまり、データベース単体ではなくプログラムを含めて体系的構成を考えるべきである、ということになります。ですので、上で書いたようにデータベース内のフラグが必須とはならないのですが、判例ではプログラムを含んで見てくれている様子が見えなかったため、フラグを持たせる方法を採用しています。この方が、データベースのみを他社に提供する場合にも、体系的構成が分かりやすいというメリットもあるのではないかと思っています。

まとめ

データベースをどう組むかということはシステムエンジニアにとって普通の知識ですが、本記事では、「著作性が認められるデータベースを作るにはどうしたらよいか」という観点で分析を行ってみました。
最後の作り方が果たしていい例なのか、これで著作性が認められるのかは分かりませんが、検討されている方の一助になれば幸いです。もっといい例が思いついた、これでは認められないのではないか、といったご意見がある方は、Twitterでご意見をお寄せいただければと思います。