Googleストリートビューは何故違法性を有しないと判断されたのか-福岡高裁平二三(ネ)四三九号-

 投稿日時
2015/04/09 17:09:25
 最終更新日時
2015/04/09 17:09:46

思うところがありまして、本日は福岡高裁平二三(ネ)四三九号を取り上げたいと思います。
判例時報2234号で紹介されている判例で、「ストリートビューと題するサービスにおける画像の撮影及びインターネット上への公開行為が不法行為上の違法性を有しないとされた事例」と紹介されています。

なお先に述べておきますが、この記事は私の考え整理も兼ねているため、長い上に誤りがある可能性があります。本件についてもっとポイントを絞ってお知りになりたい方は、伊藤雅浩先生の下記の記事をご覧いただくのが良いでしょう。
グーグルストリートビュー控訴審 福岡高判平24.7.13判時2234-44|IT・システム判例メモ

Googleストリートビュー

利便性

Googleストリートビューを使ったことが無い人、存在を知らない人というのはかなり少なくなったのではないでしょうか。Googleマップで人形のようなものを道路に配置することで、まるでそこに立っているかのような視点が得られるというサービスです。私も初めての客先や建物に伺う前は、これでチェックして周りの景色を確認するようにしています。
公共の建物やオフィス街に関して言えば、利便性が非常に高いサービスです。

利便性の裏で指摘されている問題

その反面、プライバシーに関する問題は様々なものが指摘されてきました。ざっと挙げると以下のようなものです。

  • 公道以外から撮影された画像がある
  • 自宅の塀の中を撮影された
  • 人の顔が映り込んでいる
  • 止まっている車のナンバーが判別できる

人によってはこれらを「過剰反応」と言うかも知れません。別の人は「新しいサービスに対する拒絶反応だ」というかも知れません。Googleストリートビューが始まったのは2007年で、それに対する批判は2008年頃には起こっていましたが、現在でも、新しいサービスに対してこれらに似た批判と擁護が繰り広げられているのを目にします。
個人情報保護法の改正など、プライバシーを考える機会が増える中、少し古い判例ではありますが、この判例を取り上げることで、サービス設計について考えたいと思います。

判決の目次

  • 主文
    • 一 本件控訴を棄却する。
    • 二 控訴費用は控訴人の負担とする。
  • 事実及び理由
    • 第一 控訴の趣旨
    • 第二 事案の概要
      • 二 争いのない事実又は証拠により容易に認定し得る事実
        • (1)
        • (2)
        • (3)
        • (4)
        • (5)
        • (6)
      • 三 争点
        • (1) 不法行為について
        • (2) プライバシーの侵害
        • (3) 個人情報の保護に関する法律違反
        • (4) プライバシー配慮義務違反
        • (5) 控訴人の損害
      • 四 争点に関する当事者の主張
        • (1) 不法行為について
          • 控訴人の主張
            • ア ストリートビューについて
            • イ 問題性
            • ウ 本件撮影行為と本件公表行為について
              • (ア) 本件撮影行為
              • (イ) 本件公表行為
          • 被控訴人の主張
            • ア ストリートビューについて
            • イ 不法行為の特定について
        • (2) プライバシーの侵害
          • 控訴人の主張
            • ア 本件撮影行為について
              • (ア)
              • (イ) 人の容ぼう・姿態以外もプライバシーに該当すること
              • (ウ) 公道でも一定のプライバシーの保護が要請されるに該当すること
              • (エ) 撮影行為の違法性判断基準
                • (1) 必要性・社会的有用性
                • (2) プライバシー侵害の程度
              • (オ)
            • イ 本件公表行為について
              • (ア)
              • (イ) 公表行為の違法性判断基準
                • (1)
                • (2)
              • (ウ)
            • ウ 行為主体について
              • (ア) 本件撮影行為
              • (イ) 本件公表行為
          • 被控訴人の主張
            • ア 本件撮影行為について
              • (ア)
              • (イ)
              • (ウ)
            • イ 本件公表行為について
            • ウ 本件公表行為の主体について
        • (3) 個人情報保護法違反
          • 控訴人の主張
            • イ 個人情報
            • ウ 個人情報保護法一八条一項違反
            • エ 個人情報保護法二三条二項違反
          • 被控訴人の主張
            • イ 個人情報
            • ウ 個人データ
        • (4) プライバシー配慮義務違反
          • 控訴人の主張
          • 被控訴人の主張
        • (5) 控訴人の損害
          • 控訴人の主張
          • 被控訴人の主張
    • 第三 当裁判所の判断
      • 一 本件における不法行為について
        • (1)
        • (2)
        • (3)
      • 二 プライバシー権の侵害について
        • (1) 撮影行為の違法性
          • イ 本件の検討
              (ア)
              (イ)
              (ウ)
        • (2) 公表行為の違法性
      • 三 個人情報保護法違反について
      • 五 結論

前提

被控訴人はグーグル株式会社(日本の法人。米国法人グーグル・インクの子会社)で、控訴人は福岡市に居住していた人物(X)です。
被控訴人が提供したGoogleストリートビューにより、Xが居住していた建物に干していた下着などの洗濯物が撮影・公表されプライバシー権が侵害されたとして提訴しました。福岡地裁では請求が棄却されたためXは控訴し、福岡高裁で争われた結果がこの判決です。

一つこの判決を見る上で重要となるのは、Xは以前から精神科で治療を受けていて、今回の件を知ってから「軽度精神遅滞・強迫性障害」に罹患したという事実であるかと思います。誤解を恐れず書くならば、この事実があったにも関わらず福岡高裁はGoogleストリートビューに違法性は無いと判断したわけです。もちろんこれは、もともと精神病がある人だからということではありません。このような背景がありながら、何故違法性は無いと判断されたのか。ここが重要なポイントなのではないかと思います。

争点

それでは、争点を見ていきましょう。今回の争点は以下の5つです。

  1. 不法行為について
  2. プライバシーの侵害
  3. 個人情報の保護に関する法律違反
  4. プライバシー配慮義務違反
  5. 控訴人の損害

それぞれの争点について、控訴人と被控訴人の主張、裁判所の判断の順に見ていきます。

争点1:不法行為について

控訴人と被控訴人の主張

ポイント 控訴人の主張 被控訴人の主張
ストリートビューについて
  • ストリートビューが撮影した写真は、顔の正面にはぼかしがかかっているものの、撮影場所が明確に特定できるため対象者を知っている人には特定が可能である。
  • 撮影するカメラの位置が歩行者の視点より約1m高く、塀などで遮られているはずの民家を覗く画像もある。
  • 画像を転載したホームページを作成している第三者もおり、Googleから画像を削除しても二次的に利用されてしまう。
  • ストリートビューの目的はユーザーに実体験をしているような風景を提供し、場所や地域を理解するものである。
  • これにより街を散歩したり行き先を見ることができる。また被災地の状況を記録して伝承に役立っている。
  • 撮影した画像は顔やナンバープレートに自動的にぼかしが入り、個人やナンバープレートが特定されないようにしている。
問題性
  • カナダ、EU、ドイツ、ギリシア、スイスではデータ保護等における問題が指摘されており、グーグルはプライバシー保護に関する国家機関が存在する国では、サービス開始前に当該機関と事前に調整している。
  • しかし日本にはそういった国家機関が存在しないという理由で、どことも事前協議もしないままサービスを開始した。
  • そのため、サービス開始後に一県三七市町村の議会などから規制を求める意見書が総務省に提供されている。
無し。
本件撮影行為
  • 平成21年12月2日に公開した福岡地域の画像について、同意なく網羅的に収集した行為を「本件公表行為」という。
  • 被控訴人が収集した画像は、市民の肖像権、家屋情報、車のナンバープレートなど多種多様であり、位置情報とも連動している。
  • 本件は控訴人のプライバシーを侵害している事案であるが、控訴人宅の近くだけを撮影したわけではなく、膨大な写真を撮影したことに特徴があり、一連一体の撮影行為を評価する必要がある。
  • 不法行為の成否を判断するため、被控訴人に対し撮影時期や解像度などの釈明を求めたが、被控訴人は争点と関係ないとして回答しなかった。
  • 撮影行為それ自体は不法行為を構成しうる行為ではない。
  • そのため、撮影行為を特定する必要は無い。
  • またもし不法行為を構成しうると仮定しても、原判決にあるとおりどこから撮影したかは十分に特定されている。
本件公表行為
  • 本サービスは撮影した画像を地理情報と合わせてインターネットで公開するというものである。
  • 特定の地番でピンポイントに検索可能な状況における公表行為であるという点で、過去に例がない。
無し。

裁判所の判断

ポイント 裁判所の判断
本件における不法行為について
  • 「本件撮影行為」は福岡地域を相当な日数をかけて現地に出向いて撮影した行為となるが、一つの行為と観念することは困難である。
  • 多数の人や物が撮影されているが、それらの権利・利益は控訴人と無関係である。
  • 全てを一連一体と評価して本件撮影行為全体が控訴人に対する不法行為であるという主張は採用できない。
  • しかし、控訴人の洗濯物を干していた状況が撮影された事実を不法行為とするという観点から検討する。
  • 同様に、平成21年12月2日にストリートビューを公開した際にこの画像が含まれていたため、この公表により不法行為が特定されると解される。

争点2:プライバシーの侵害

控訴人と被控訴人の主張

ポイント 控訴人の主張 被控訴人の主張
本件撮影行為について

プライバシー権について

  • 伝統的なプライバシー権の本質は、私生活から第三者の干渉を排斥することにある。
  • 昭和23年12月10日に採択された世界人権宣言第一二条を見ても分かるとおり、プライバシー権の対象は容貌、姿態に限定されない。
  • プライバシー干渉の典型的な行為として、私的事項をのぞき見ることも含まれる。更に撮影するという行為はより一層侵害の程度が著しい。
  • 近年、プライバシー権はより積極的な、自己に関する情報をコントロールする権利として理解されるようになっており、公表がない撮影行為はプライバシー侵害が生じる。

人の容貌・姿態以外もプライバシーに該当する

  • 「宴のあと」事件判決で示されている四つの要件に当てはめても、侵害であると考えられる。
  • 私的な生活空間における事実である。
  • 一般の女性であれば干している下着等を撮影されることを欲しない。
  • 控訴人の自宅や洗濯物は一般に知られていない。
  • 撮影により、控訴人が不快、不安を覚えている。

公道でも一定のプライバシーの保護が要請される

  • 本件画像にある洗濯物が公道から撮影可能な場所にあったとしても、要保護性が失われるものではない。
  • 路上でキスをするカップルなど、誰が見てもセンシティブな画像は、同意無く収集されることを拒めるはずである。
  • OECDの「プライバシー保護と個人データの国際流通についての勧告」、EUの「個人データ処理に係る個人の保護及び当該データの自由な移動に関する欧州議会及び理事会の指令」、日本の個人情報保護法において、個人データの収集行為そのものを規制している。

撮影行為の違法性判断基準

  • 公道上からプライバシー情報を撮影する行為は過去の判例に鑑み、撮影行為自体の正当な目的と必要性、及び撮影手段の相当性が求められる。
  • 報道の自由など重要な権利と異なり、被控訴人の営業の自由に過ぎず、必要性・社会的有用性は小さい。
  • 対象者は多く、その中には少ないが家屋内や風俗営業施設の前にいる人物もおり、プライバシー侵害の程度は大きい。
  • 撮影されたのは志垣を含む洗濯物であり、公開を望まないというプライバシー情報であり撮影行為に違法性が認められる。
  • 控訴人自身のプライバシー侵害の有無とは関係ない事項である。
  • 控訴人が紹介している判決は私生活を公表する行為を侵害行為として捉えており、むしろ本件が侵害でないと裏付けするものである。
  • 本件画像における洗濯物(らしきもの)は公道上から目視できる位置にかけられており、秘匿性が高いとは認められない。
本件公表行為について
  • 控訴人は、本件画像がインターネット上で公表されていることを知って強いショックを受け、監視されているのではないかという強い不安にさいなまれた。
  • そのため、公表された自宅から転居せざるを得なかった。

公表行為の違法性判断基準

  • 過去の判例に基づき、事実を公表されない法的利益と公表する理由を比較し、前者が後者に優越するかでプライバシー侵害が成立するかが判断できる。
  • ストリートビューにより利便性を感じるユーザーはいるが娯楽目的であり、保護の必要性は極めて低い。
  • 問題のある画像を事前にチェックしておらず、また強力な媒体で公開され多数の目にさらされることなどから、侵害の程度は大きい。
  • オプトアウト方式を設けても、全ての個人が自分が写っている画像に気付くとは限らない。
  • 観光地や有名施設でもなく、全世界に公表する必要性が見いだせない住宅地で行われたもので、公表行為の必要性や有用性を上回るプライバシー侵害がある。
  • 不法行為は成立しない。
  • 写っているものが洗濯物があるかどうかも明確ではなく、下着が公表されたと立証されていない。また本件画像から控訴人個人は特定できない。
  • 控訴人が自ら公衆の目に触れる位置に洗濯物を干しており、他人に知られたくない私的事項とは言えない。
行為主体について
  • ストリートビューに画像を提供したのは米国グーグルであるが、撮影したのは被控訴人である。
  • 撮影段階から米国グーグルが定める統一手段に基づき行われており、共同不法行為を行ったと評価できる。
  • 仮にそうでなくても、画像を提供した行為から共同不法行為に該当する。
  • 本件画像を公表したのは被控訴人ではなく米国グーグルである。

裁判所の判断

ポイント 裁判所の判断
プライバシー権の侵害について
撮影行為の違法性
  • 社会に生起するプライバシー侵害の態様は多様で、出版物の公表だけでなくのぞき見、盗聴、写真撮影、私生活への干渉行為なども問題となり得る。
  • 撮影行為については、容貌・姿態が撮影される場合は肖像権侵害と捉えられるが、それ以外の私的事項についても、プライバシー侵害となり得る。
  • 違法かどうかの判断は、平穏の利益の侵害が、社会生活上受任の限度を超えるものと言えるかどうかが判断基準とされるべきと解される(最高裁平成一七年一一月一〇日第一小法廷判決)。
本件の検討
  • 本件居室のあるアパートは公道に接しておらず、本件画像の上では、アパートより手前にある平屋建ての建物が大きく見える。
  • 本件居室のベランダはアパート建物の一部として撮影地点から離れたところに見えるにすぎず、ベランダの手すりにかかっている布様のものも具体的に何であるかは判別できない。
  • 本件画像には表札などの個人名やアパート名が分かるものは写っていない。
  • 以上より、本件居室は公道から周囲全体を撮影した際に映り込んだもので、画像全体に占めるベランダの割合は少ない。そこに掛けられているものも判然としないため、一般人を基準とした場合にはこの画像を撮影されたことにより私生活の平穏が侵害されたとは認められないといわざるを得ない。
  • 公道において撮影する際、周囲の様々なものが写ってしまうことはあるが、一定程度は社会的に容認されていると解される。
  • 以上の通りであることから、本件画像の撮影行為について不法行為は成立しない。
公表行為の違法性
  • 本件画像についてはベランダに掛けられたものが何であるか判然としないため、公表された画像からはプライバシーとしての権利又は法的に保護すべき利益の侵害があったとは認められない。
  • したがって、本件公表行為についても不法行為は成立しない。

争点3:個人情報保護法違反

控訴人と被控訴人の主張

ポイント 控訴人の主張 被控訴人の主張
個人情報保護法について
  • 個人情報保護法は取締法規であるが、注意義務を画するものとして周知されているため、規制内容は違法判断の基準として取り込まれるべきである。
  • 控訴人は本件画像の撮影・公表行為のみではなく、被控訴人の加害行為全体に対して個人情報保護法違反を主張する。
  • 個人情報保護法違反の有無と、被控訴人の控訴人に対する不法行為の成否は直接関係するものではない。
個人情報
  • ストリートビューの画像が個人情報に該当するかどうかは、公表された画像のみで判断することはできない。
  • 住所を検索すると画像が表示されることから、地理情報と結びつけて住所と建物を表示させるもので、控訴人個人を識別することができ個人情報に該当する。
  • マッシュアップサービスであるゼンリン住宅地図では、住所を検索すると表札も検索できるため、本件画像と控訴人氏名を容易に照合できる。
  • つまり、本件画像も個人情報に該当する。
  • 本件画像には人の肖像など写っておらず、特定の個人を識別できない。
  • 経済産業省のガイドラインでも地図上の地点や住所では個人情報に該当しないとされており、この解釈からも個人情報は該当しない。
  • 総務省が平成21年8月27日に公表した「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言でも、現時点では個人情報に該当しないとしている。
  • 被控訴人はゼンリンから地図情報の提供を受けておらず、控訴人の主張は事実に反する。
個人情報保護法一八条一項違反
  • 撮影・公表時点においてプライバシーポリシーすら書き込んでおらず、利用目的を通知・公表していないため個人情報保護法一八条一項に違反する。
無し。
個人情報保護法二三条二項違反
  • 事前に広報を行わないままデータの収集と公表を行っており、個人情報保護法二三条二項に違反する。
  • 本件画像はデータベースとして体系的に構成されておらず、個人データには該当しない。

裁判所の判断

ポイント 裁判所の判断
個人情報保護法違反について
  • 本件画像には特定の個人を識別することができるものはない。
  • インターネット検索で住所検索と画像が関連づけられるとしても、それだけで控訴人個人を識別することはできず、個人情報に該当しないと解される。
  • よって、控訴人の主張は採用できない。

争点4:プライバシー配慮義務違反

控訴人と被控訴人の主張

ポイント 控訴人の主張 被控訴人の主張
プライバシーへの配慮
  • 新規サービスを実施する事業者は、プライバシー侵害を最小限にすべく配慮する義務を負っており、プライバシー影響評価を実施すべき義務を負う。
  • 具体的にはOECDガイドラインが定めている通り、収集制限の原則と目的明確化の原則に従って撮影するべきであった。
  • <プライバシーに配慮する義務があるというのは控訴人の独自の見解である。/li>
  • 仮にそうだとしても、私法上の義務ではない。
  • ギリシアやドイツでは撮影や公開が制限されたが、本件では保護のための手当が何もされていない。
  • 配慮も無く漫然とサービスを開始したことで控訴人に精神的苦痛などを与えたことは、不法行為として損害賠償義務を免れない。
  • サービス開始前に福岡市、福岡県に説明を行った。
  • 開始時から顔にぼかしをかけ、途中からナンバープレートのぼかしと専用ダイヤルの設置を行った。
  • ウェブサイトやパンフレットでも周知するための施策を行っている。

裁判所の判断

ポイント 裁判所の判断
プライバシー配慮義務違反について
  • 控訴人は新規事業展開に際して配慮義務があると主張しているが、独自の見解である。
  • 前記の通り本件においてはプライバシー侵害が生じていないので控訴人の主張は採用できない。

争点5:控訴人の損害

控訴人と被控訴人の主張

ポイント 控訴人の主張 被控訴人の主張
控訴人の損害
  • 本件判明後、控訴人はショックを受け既往症である強迫神経症及び知的障害が悪化した。
  • 生活の上で常に盗撮されているのでは無いかという不安が生じ、職を失い、転居せざるを得なかった。
  • 慰謝料150万円を含む300万円の損害が発生しており、そのうち60万円を請求する。
  • 控訴人は本件画像が公開される前に障害二級の認定を受けている。公開前後で病状に変化は無く、公開による損害を認めることはできない

裁判所の判断

他の争点で不法行為や侵害は無いと判断したため、ここについては述べていません。

結論

原判決を相当として、控訴は理由がないとして控訴は棄却されました。

この判決から考えられること

この判決を見て、皆さんの意見はいかがでしょうか。意外でしたでしょうか、それとも当然でしたでしょうか。

判決をまとめている内に考えたことですが、この訴訟では争点3:個人情報保護法違反争点4:プライバシー配慮義務違反も争われていますが、注目すべきは争点1:不法行為について争点2:プライバシーの侵害であると思います。(個人情報保護法違反については、ぼかしが掛けられていない画像を所持しているのは誰なのかとか、そういった点で争った方が良かったのでは無いかと勝手に思っています。)

私が特に気になったのは以下の点です。

グーグルはプライバシー保護に関する国家機関が存在する国では事前に相談していたが、日本にはそういった機関がなかったと判断された

経済産業省というよりは消費者庁に近い機関でしょうか。個人情報保護法改正後は個人情報保護委員会がそういった役割を持ってもいいと思いますが。
控訴人が求めた、新規事業展開に際してはプライバシーに配慮する義務があるというのは独自見解であるとして裁判所に否定されましたが、いわゆるPIAのような仕組みはあっても良いと思っています。

どんな画像でも公開していい、ということではない

今回は、洗濯物が画像で確認できず、また画像の中で占める割合も小さかったために違法性がないと判断されました。つまり、「○○通りで見かけた人の顔」とか、「道路から干しているのが確認できた下着」といった写真を公開していた場合は判断が異なる場合があります。
また画像の中で割合が小さいとしても、解像度の高い画像では綺麗に拡大できてしまったと思いますので、その場合にどう判断されたかは興味があります。

おわりに

IT技術が発達するにつれて、先進的なサービスが数多く提供されてきています。ですが、そういったサービスの中には明らかに利便性や経済性を置き去りにしたあまり、プライバシーへの配慮が足りないサービスがあることは否定できないと思います。Googleストリートビューがどう判断されたのかを考えることで、他のサービスについて考える一助になればと思います。