日経主催の『検証・ビットコイン事件「ネット仮想通貨」の未来を探る』に行ってきました

 投稿日時
2014/05/02 16:17:15
 最終更新日時
2014/05/02 16:17:15

少し前になってしまいますが、2014/04/21(月)に御茶ノ水ソラシティで開かれた『検証・ビットコイン事件「ネット仮想通貨」の未来を探る』に行ってきました。
仕事でビットコインに関わっていたため参加を検討したのですが、普段参加しているセミナーと違ってこれは有料。19,800円です。果たしてそれだけの費用対効果があるのか?そもそも良いセミナーだったとしても、自分のこれからのキャリアで得られた知識を使うことがあるのか?と悩んだのですが、講師陣も有名な方でしたので参加してきました。結論から言えば、今まで知らなかった/思いつかなかった知見が得られたセミナーでした。

以下、今回のセミナーで得られた知識の中で私が印象に残ったものを書いていこうと思いますが、セミナーの各セッションで聞いた知識というよりは、この日を通じてその人がどういったことを仰っていたか、という視点で書いています(何回か登壇/発言された方もいらっしゃいましたので)。
あくまで私の聞いた限りであり、誤りがある可能性もご承知ください。
また、他にも登壇者の方がいらっしゃいましたが、セミナー資料を見て話を聞くだけで精一杯だったのもあるため、全員ではありません。

国際大学GLOCOM 客員研究員 楠正憲氏

楠氏といえばマイクロソフト、ヤフーに所属されていた方で、IT技術にもお詳しい方という印象でしたが、学生時代から仮想通貨に興味があったということで、過去から現在までの流れを見通した通時的な講演をされていました。
なお、当日のプレゼンはslideshareで公開されています。»ネット仮想通貨の論点

ビットコインについて

  • ビットコインの市場は大きくなっていると言われているが、2013年12月のピーク時でもマネーストックはおよそ1兆円で、それほど多くない。スーダンやクロアチアの貨幣通貨量と同程度。
  • 決済取扱高もカード(VISA/マスターカード)と比較にならず、VISAの78分の1程度。
  • ただし平均取引額は742ドル。マイクロペイメントには使われていないのではないか。
  • ビットコインは匿名と言われているが、単なる仮名化である。
  • Silkroad2、hitman networkなど闇サイトで使用が開始されている。
  • みずほ銀行のように取り扱うことで訴えられる可能性もあり、日本に根付くかは不明。
  • 価格の上下が激しい中で企業はどう扱うのか。現在のままでは帳簿も作れない。
  • 最もプライバシーを重視できなさそうな方法なのに支払いというプライバシーが重視されるものに使用できている。
  • ビットコインは金(gold)と同じく、価値の安定を目指しておらず、総量を限定することで価値を高めているのでは。
  • これまでの電子マネーと違って、通貨の補助的存在ではない。
  • ビットコインの流行は、現在の決済手段で満たせないニーズがあるということではないか。

マイニングについて

  • マイニングは当初の350倍の難易度になった。また今後も難易度が増すと思われる。
  • 現在は個人でマイニングをする人は少なく、組合に入って配当を受けるのが一般的。
  • マイニングの報酬は4年ごとに半減する仕組み。
  • マイニングで得られる報酬が見合ったものでなくなった場合、大規模な装置を購入した業者はどうするのか。
  • 赤字のマイナー(ビットコインの採掘者)が辞めないのは2つの理由があると思われる。「価値が上がると思っている」「初期投資額が安い」
  • マイニングが終わった後、マイナーの報酬は手数料のみとなる。
  • 今でもビットコインの仕組みはファウンデーションの話し合いによってバージョンアップされている。

マウントゴックス事件について

  • トランザクション展性の影響はわずかと言われており、85万ドルが消えた理由にはならない。
  • ビットコインは鍵の保護が弱い(「耐タンパ性がない」)ので、鍵を盗まれたのかも知れない。
  • ビットコインでは全てのお金の移動が全て分かるが、Mt.GOXのアドレスが分からないと資金の動きは分からない。

早稲田大学 商学研究科教授 岩村充先生

私は存じ上げない方でしたが、お話を伺ってみると統計、金融、経済、暗号など多方面で幅広い知見をお持ちの方で驚きました。
帰ってから調べると、元日銀で、更に「法とコンピュータ学会」の理事もされているとか。納得。

ビットコインについて

  • ビットコインは「コイン」ではない。あくまでシステムの一部。
  • 通貨価値が「安定」しているというのは変動しないということでは無く、「予想通りに動く」ことである。
  • ビットコインは台帳を共有しており、攻撃者の結託に弱く危険。暗号セキュリティの哲学を踏まえていない。
  • 電子マネーのタイプは大きく分けて三通り。プリペイド型(Suicaなど)、支払指示型(paypalなど)、ネットワーク型(digicashなど)。
  • ビットコインはいつまでも生産できるものではなく、バブル理論の上に成り立っている。
  • 普通の通貨の価値が安定しているかと言えばそれは誤り。場合によっては国は価値を下げようとする。ビットコインは勝手に下げられることはないが自己責任。
  • 「数が限られているから価値は一定」というのは誤り。アンモナイトの化石のように、バブル的な構造を持っている。

ビットコインのコストについて

  • 「安いコストのためマイクロペイメントに使用できる」と言われているが、違うと思う。
    一つの取引は安くても、それを承認する(ブロックチェーンを生成する)ためにコストがかかっている。つまり他のPCに電力などのコストがかかっている。 これでは取引が安いとは言えないし、社会政策性の点から問題がある。
  • マイニングに参加する人が増えれば増えるほど報酬を得られないPC、つまり電気代をペイできないPCが増えていく。
  • つまりビットコインは取引一つあたりのコストは少ないかも知れないが、システム全体としてはコストが大きい。
  • マイナーはコストが得られているように見えて、固定費の償却も考えると赤字なのではないか。

ビットコインのレトリックについて

  • ビットコインのシステムにはレトリックがあり、「mining(採掘)」などゴールドラッシュを想起させてマイニングさせるようにけしかけている。
  • 「センターがない」というが、取引台帳を持っているのはおかしい。よりセンター寄りに感じられる。厳密に言えばP2Pでもない。

日本経済新聞社 論説委員兼編集委員 関口和一氏

この方も存じ上げませんでしたが、経済はもちろん、セキュリティ系にもお詳しい方でした。

ビットコインについて

  • ビットコインの流行は投機の対象というのもあるだろう。ファッション的な要素もあるのでは。
  • 通貨危機など国の通貨への不安感からビットコインを買う人もいる。
  • 通常の通貨では海外送金は不便。
  • うさんくさい部分もあるが、だからといってNGではないだろう。
  • httpと同じく改良していくことで国を超えた決済手段になるのでは。